明日誕生日だ。
　つまり、今日は私の5X歳の最後の日ということになる。

　この1年、コロナ騒動はさておき、個人的にはロクなことがなかった。
　私の人生において、これだけ悪いことが続く年は今までになかったし、これからもないだろう。他の人の人生でもこれだけ悪いことが立て続けに起こることもそうはないだろう。

　2020年は、「通勤」という行動がまったくなくなったので、その浮いた時間を運動時間に充てていた。
　朝から自転車で数十キロ走ったあと、ランニングを10キロ程度。
　夏にはずっと閉まっていたウチの近くのプールが再開されたので、毎日トライアスロン状態となった。

　そのことがどの程度影響したのかは分からないが、年末くらいから右脚の太ももが妙に痛くなり、ちょうど1年前の昨年の誕生日の頃からは歩くのも大変になってきていた。
　筋肉痛にしては治りが遅いので、そろそろ病院で診てもらおうかと思った3月。
　その太ももは、家から前の道に降りる階段で簡単に折れてしまった。
　大腿骨という体内で最も大きな骨があんなに簡単に折れるとは思いもしなかったことである。

　今から思えば、折れた場所が家の前だったのは不幸中の幸いであった。
　家から離れた場所でのサイクリング中やランニング中だったら、どこの病院に搬送されたか分かったもんじゃない。
　冬の終わりのまだ寒い夕方、コロナ騒動で逼迫している救急車はなかなか来ない。
　震えながら救急隊の到着を待ったあと、担架に移し替えられるだけでも、あまりの激痛に叫びまくったのであった。

　手術を終え、桜を見ることもなく入院生活は数週間続いた。
　入院中にふと気付くと、自分の右腕がまったく上に上がらなくなっていた。
　見事に五十肩になっていたのである。
　五十肩になった理由は、右脚の骨折によって体全体の筋肉のバランスが崩れたから、というのが先生の説明であった。入院中だったので診断は早い。

　車椅子でしか移動できない状態で、右肩のリハビリは始まった。　
　車椅子→松葉杖2本→松葉杖1本→ヨチヨチ歩き、、、と徐々に右脚は回復し、通常の85％くらいは回復していると思われる。
　右肩は、まだ通常の50％くらいだ。

　10月になって、リハビリを兼ねたゆっくりサイクリングを再開した。
　リハビリに通う病院までの往復10キロくらいの短いものであったが、偉大なる一歩(一漕ぎ？)であった。

　11月になり、軽いジョギングを再開することにした。
　最初の300メートルで、息が上がって苦しくなった。ブランクが長過ぎたのか。
　翌日、再び少し走ると苦しくなった。ボチボチやろう。
　さらに翌日、少し歩くだけで苦しくなった。　ちょっとおかしい。

　大腿骨と右肩で通っている病院にあった循環器内科に行くと、朝イチで心電図を取り、血液検査をしただけで、「すぐに手術をします」という流れになり、正午には手術台の上にいた。
　ありがたかったのは、数週間入院し、8ヶ月もリハビリで通っていた病院なので、私の直近の生体データが揃っており、すぐに手術に踏み切れたことである。

　結果的に、ランニング初日の苦しみの時点で心臓発作が起こっていた、というのが先生の見立てであった。
　あと1日遅かったらやばかったらしい。

　物事には、良い面と悪い面の両方あるのだろうが、
　一連の流れの中で、心臓手術をした先生の言葉を借りると、
　私はあの寒い夕方に大腿骨を骨折していなかったら、多分死んでいただろう、、、
　ということである。

　昨年の年初から足が痛くなり、運動量を減らしていたところで大腿骨の骨折。
　もし足が痛くもなく、骨折もしていなかったら、毎日トライアスロンを続けていたに違いない。
　一方、心筋梗塞の原因である動脈硬化は、いきなり起こるわけではなく、数年から数十年の蓄積で起こっている。
　つまり、動脈硬化がいつ狭心症や心筋梗塞を発症させるかも分からない状態での毎日のトライアスロン。いつ爆発するか分からない心臓を抱えて、自転車にまたがり、路上を走り、プールで泳いでいたわけである。
　実際、心筋梗塞の最後の一押しはランニングであった。

　私の5X歳は、単年で考えると、とんでもなく悪い1年であったが、
　実は、長期的に考えると、今までの不摂生のウミを出し切ったという記念すべき年だったのかもしれない。
　結果的に、私の動脈硬化はすっかりクリーアップされて、20歳くらいの頃の血管みたいにキレイになっている。
　ほどなく、大腿骨も右肩も治るだろう。多分。


　去っていく5X歳と明日からの5Y歳に乾杯！


追記）
　それにしても、この年で動脈硬化の検査なんかまだしてないって。
　毎年人間ドックに行っているんだから、心筋梗塞になる前に誰か気付けって。
　
　まだ生きているからこそ言える愚痴でした。

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